ASSET DIRECTION®事例紹介(いよぎんグループ)

コンサルティングの質を高めるとともに
“銀証連携”を深化させるツールとは?

伊予銀行
リテール推進部 課長
阿部 慎二
いよぎん証券
営業企画部 部長
益上 仁
三菱アセット・ブレインズ
マーケティンググループ
コンサルタント
蛎灰谷(かきばや)

*所属・役職は2015年11月時点のものです。

「ここ1年ほどで、当行も預かり資産営業のスタイルを大きく変化させてきましたが、目指しているのは販売手数料に頼らないビジネスモデルの構築です」。そう話すのは、伊予銀行のリテール推進部で課長を務める阿部慎二氏。伊予銀行といえば、投信窓販にも積極的に取り組んできたことで知られる有力地銀だが、さらなる進化を遂げるべく、フロー型からストック型のビジネスモデルへの転換が急速に進んでいるという。

この5月には、そうした変革の一環として、三菱アセット・ブレインズ(MAB)が提供する預かり資産営業支援ツール「ASSET DIRECTION®」を導入した。ストック型のビジネスモデルの確立には残高の積み上げが不可欠となるが、「お客さまにポートフォリオの考え方をご理解いただき、長期投資を促すツールとして非常に有効だと考えました」と、阿部氏は導入の背景を説明する。

01. 情報共有のきっかけになったASSET DIRECTION®の導入

[写真]益上 仁

ASSET DIRECTION®はMABならではの投信評価データを活かしつつ、大手銀行のトップセールスのノウハウも取り入れて開発された営業支援ツールだ。CRMシステムと連動させることで、預金や保険なども含めた顧客の保有資産の分析ができるほか、商品の追加でリスク・リターンがどう変化するのかといったシミュレーションもできる。

[写真]阿部 慎二

すでに複数の地方銀行で採用されているが、伊予銀行で特徴的なのはグループのいよぎん証券でも併せて導入した点だろう。「証券のほうではもともとポートフォリオ提案ツールを導入していましたが、正直いってあまり活用されていなかった実態がありました」と話すのは、いよぎん証券の営業企画部で部長を務める益上仁氏。そのツールはCRMと連動していなかったため、顧客の保有資産を入力しなければならなかったことが理由の1つだが、「その反省を活かし、銀証連携の新たなモデルを確立するためにもASSET DIRECTION®を導入したのです」。同ツールは「いよぎんグループ アセットダイレクション」(以下、iAD)と呼ばれ、まさにグループでの活用が前提となっている。

[写真]益上 仁

いよぎん証券は2013年に伊予銀行の100%子会社として開業し、両者の連携で顧客の多様なニーズに応えてきたが、顧客情報については証券から銀行には提供するものの、その逆はなかった。もちろん、銀行と証券の間に一定のファイアウォールは必要だが、顧客は伊予銀行での取り引きもいよぎん証券での取り引きも同じ感覚でとらえている場合が少なくなく、利便性が高いとは言い難い状況だった。そこで、「iADの導入を契機に、融資情報などを除くCRMデータの一部を共有することにした」(益上氏)という。「普通の証券会社であれば、商品が売却されて銀行に資金が流れることには神経質になるはずですが、私たちの場合は同じグループの銀行に戻るだけ。無理をする必要がありませんから、お客さまにとっても安心感につながるようです」。

銀証の連携を深め、ビジネスモデルそのものにも大きな影響を与えたiADだが、導入にあたっては様々なカスタマイズが加えられたという。「銀行さんではタブレットでの使用が基本になっていますので、まず操作スピードの向上を徹底的に図りました」。そう振り返るのは、MABのコンサルタントで伊予銀行を担当する蛎灰谷寛氏。「あとは多くの機能を付加して重装備にするのではなく、むしろシンプルにすることで販売現場の皆様のハードルを低くするよう注力してきたのです」。

[写真]阿部 慎二

その点については阿部氏も、「現場のニーズはとにかく分かりやすく、すぐに使えること」だと強調する。「機能が多すぎても結局は使いませんし、逆にツールに頼り過ぎてしまってもいけないと考えています。ツールはあくまで1つのきっかけであり、お客さまといかに深い会話ができるかが本来の目的なわけですから」。

益上氏も、「複雑なものをシンプルに見せるというのが、実は一番難しいのかもしれません」と指摘する。「その点、iADは本当に重要な部分だけをビジュアルで示すことができ、お客さまに与える印象を重視している点も私たちが評価したポイントです」。直感的に使用できる操作性―それこそがiADの大きな特長であることは間違いない。「お客さまや販売員の皆様が一目見たときに感じる世界観こそ、開発当初からこだわってきた点なのです」(蛎灰谷氏)。

02. 資産の偏りを示すことで新規顧客の開拓にも効果が

では、導入からおよそ半年が経過した今、販売現場はどう受け止めているのか。阿部氏は、「実際の活用という意味ではまだこれからの部分もありますが、徐々に好事例も出てきているのは確か」だと話す。むろんMABでも、導入当初からブロック別の勉強会や支店長に対する研修などで徹底的にバックアップしてきたが、その効果もあって、稼働件数は当初の想定を上回っているという。

また、特に本部にとって意外だったのは、これまで預金だけだった顧客に使用することで、初めての投信購入につながるケースも出てきている点だという。実は従来のASSET DIRECTION®では顧客のポートフォリオをリスク資産だけのチャートで示していたが、今回は預金を加えたチャートでも表示できる形にカスタマイズした。銀行の顧客の場合、チャートの大半が預金で占められることになるが、それが自らの資産の偏りを実感し、リスク許容度を高めるきっかけになったわけだ。

[写真]蛎灰谷 寛

「地元のお客さまの資産を守り、育てるのが私たちの使命です。そうした銀行全体の考え方とも合致したツールですから、今後はiADをベースにして、多くの販売員にポートフォリオ提案を身につけてもらいたいですね」(阿部氏)。益上氏も、「商品ありきの営業から資産管理型営業にシフトしていかなければならないという大きな流れがある中、販売現場の意識改革を促すツールという役割も果たしてくれるはずです」と期待を寄せている。

販売会社にも「フィデューシャリー・デューティー」が問われる今、コンサルティングの質を高めるツールとして定着したASSET DIRECTION®。伊予銀行の場合には銀証連携を深化させるツールとしても機能したわけだが、変革期ならではの課題を解決できるソリューションとしても、地方銀行に不可欠な存在になりつつあるのではないだろうか。

*金融情報誌『Ma-Do』(Vol.40)の記事に加筆のうえ掲載しています。

*ASSET DIRECTIONは三菱アセット・ブレインズ株式会社の登録商標です。